車椅子の点検や整備はマスト
フットレストを使用しないと怪我をすることも
結婚式場にお勤めの皆さんが、介護のお手伝いをする場面で多いのは、「車椅子介助」ではないでしょうか。昨今では、各式場に何台も車いすが用意されていることが大半です。
車いすは、主に2種類。
介助式と自走式があるのは、皆さんご存知ですか?
介助式はタイヤが小さく、幅も狭くコンパクト。認知症がある方や、日ごろ車椅子を使っていない方は、介助式のほうが安心です。化粧室など狭い場所でも扱いやすいのがポイントです。
自走式はタイヤが大きく、タイヤの周りにハンドリングがついています。後ろの介助ブレーキが無いタイプのものもあります。普段、車椅子を使っていて自分で操作でき、自分で動きたいという方は、自走式がいいでしょう。
「車いすの用意もしてあります!」と準備するだけではもちろんダメ。
タイヤの空気はちゃんと入っていますか?
ブレーキはきちんと効きますか?
必ず確認してください。
式場スタッフが、結婚式の最中ずっと付添うことは少ないと思いますが、場所を移動する時の介助で、頭に入れてほしい重要なことは以下の2点です。
フットレストに足が乗っていないまま動かすと、足がねじれて捻挫や骨折することがありますので、とても危険です。食事中など、本人がくつろいでいる時に、床に足を下ろしている場合もあります。
テーブルクロスの下で、フットレストから足が落ちているのを知らずに、車椅子を動かしてしまうと、怪我に繋がる恐れもあるのです。
「少しの間だから・・」と、車いすを一瞬止めるつもりで、そのままブレーキをかけない人も多いですが、わずかな時間でも両方のブレーキを必ずかけてください。思わぬ事故になってしまうこともありえます。
座面の奥までしっかり座れているか確認してから押しましょう。車椅子を押す速度は、普通に歩く速度よりもやや遅めで。式場での会場移動の時は、大勢の方と一緒に動くので、前の方の足や衣服を踏んでしまうこともあります。しっかり間を取って、ゆっくり押しましょう。
エレベーターに車椅子を入れるときは、奥行きに注意を。後ろから押していると意外とつま先がどこにあるか、分からないことがあります。壁にぶつけたりしないように、余裕をもって乗り入れましょう。
式場スタッフの手伝いが必要とされるのは、階段や段差です。
その際車いすの向きは必ず、
➀登るときは、前向き
②降りるときは、後ろ向き
を徹底してください。
車椅子をはさみ、2人以上で持ちあげましょう。
その時は、足元あたりのフレームをしっかりと持ちますが、車椅子によっては、すぽっと抜ける場合もありますので要注意。タイヤを持つのは回ってしまうので、危険です。
また、乗っている本人はかなり怖い思いをしています。「上げますよ」「あと、3段ですよ」「降ろしますね」など、こまめに声をかけてください。その一言が安心に繋がります。
その結婚式場はとても急な坂のある式場。挙式と披露宴の会場が坂をはさんで、上下に位置していました。足の不自由なお父さんの車いすを押して小雨が降る中、何度も坂を往復しました。
私たちも大変でしたが、乗っているお父さんも、かなり怖かったと思います。
そこで、坂を下りるときに、「見てください、桜がきれいですよ」と声をかけました。
坂道に沿って、桜が見事に咲いていたのです。
お父さんが見上げると空に花びらが舞い、顔がほころびました。
その後、披露宴で楽しい時間を過ごしたのち、坂の上の部屋で休憩。
お開きに間に合うようにとお連れしようとすると、お父さんは気兼ねして「ここで待っていよう」と言ったのです。理由はもちろん、また坂を下らないといけなかったから。
そこで、私たちは、
「もう一度あの綺麗な桜を見てみませんか?」
と声かけし、無事にお連れ出来たのです。
花束贈呈にも間に合い、とても感動的な披露宴となりました。
車いすを使用する機会は今後も増えると思います。安心、安全な使い方を、今一度確認しておきましょう。