「耳が遠い人には動作もつける」
「目が悪い人にはシーンの説明を盛り込む」
高齢になると、目や耳が不自由になってきます。それに伴い、若い方や健康な方には想像もできないほど、いろいろな不便さが出てきます。
高齢の方に多い目の病気は、白内障や加齢黄斑変性、緑内障、糖尿病性網膜症などがあります。白内障は、とてもポピュラーな病気で、70代以上の方だとほぼ発症する病気。老人性の白内障では、薄暗い場所だと物が見えにくく、全体的にぼんやりとします。また、光がとてもまぶしく感じることもあるので、披露宴やパーティの際は要注意かもしれません。
緑内障は、ある部分だけが見えないという症状です。(視野欠損)
白内障、緑内障は、早い方で40~50代で発症することもあるので、皆様もご注意下さいね。
目が不自由な方の場合、身だしなみや食べこぼしがあってもご本人は気付きません。そのような状態であれば、さりげなく直してあげてください。
会場でのご案内は、ご本人のスピードに合わせ、かなりゆっくりめにサポートを。階段では、こまめに声掛けが必要です。
「あと2、3歩前に行きましょう」
「後ろから人が来ているので右によけましょうね。」
など、細かく具体的な声かけや誘導が必要になります。
見える範囲が決まっている方には、その範囲内に食事のセッティングしてください。
耳が聞こえにくい方を外見だけで判断することは、なかなか難しいものです。補聴器を使用されるのでは?と考えがちですが、実は皆さん補聴器を使いたがりません。理由はピーという雑音などを拾いやすくなってしまうから。
耳が聞こえにくいと、周囲の状況が分かりづらく、人にぶつかりやすいので、十分に気を付けてください。案内する際は、なるべく大きく手ぶりをつけて、視覚で分かるように説明するのがポイント。
「お化粧室はあちらです」
「座ったままでお待ちください」など、大きな手の動作を必ず入れて下さい。
声は低音が聞き取りやすいので、女性よりは男性スタッフのほうがいいかもしれません。どうしても、聞き取りづらそうな場合には、筆談が早い場合もあります。
挙式中や大事なスピーチの時は、声かけをするタイミングも要注意。
耳が遠い方は、大声になってしまう傾向にあります。厳粛な静まり返った場で、昔のコントのように、「え~!?え~!?なに~!?」となってしまうと大変です。
本人は状況が理解できていないこともあるので、その時は、「し~!!」という手ぶりと同時に、注目してほしいシーンを指し示しましょう。
最後に実際にあったお話を1つ。
「どうしても出たいと言うので・・」
と、少し戸惑った様子で、新婦が大好きなおばあちゃんの、式当日のサポートを当社に依頼してきたときのことです。話を聞くと、おばあちゃんはほとんど視力がなく、全く見えない状態だとか。
「結婚式に出てくれるのは嬉しいけれど、花嫁姿もお料理も、ビデオも何かも見ることができないので、つまらないかもしれない。」
新婦の心配はそこでした。
「どうしても出席したい」
とおばあちゃんの願い。
そこで、私たちの出番です。
優しそうなおばあちゃんに、当日はできる限り、場面場面で説明をしていきました。
「今、お孫さまが入場ですよ。きれいなレースのドレスですよ」
「背の高いハンサムなお婿さんですね」
「もうすぐ、指輪交換ですよ」・・・・。
一つひとつの説明に頷きながら、見えないはずの目をじっと凝らすように見つめていました。
挙式が終わり、写真撮影で新郎新婦のそばにお連れしたとき、おばあちゃんは、新郎のそばに近づき、
「どうか、どうか、この子をよろしくお願いします」
そう、囁いたのです。
じっと花婿さんに顔を向けて、しっかりと手を握って伝えていました。
その瞬間、
「ああ、どうしてもこの一言が言いたかったんだ・・。」
私たちはそう理解しました。
おばあちゃんのほっとした、安心した笑顔を見たとき、私たちは涙が止まりませんでした。