教えて!カイゴ (for wedding)

ブライダル産業新聞 コラム第4回 認知症の方への対応

2018.03.01

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介護の視点から見るいい結婚式の作り方
連載4

認知症のゲスト

ご高齢の方でも特に対応に気をつけておかないといけないのが認知症でしょうか。

最近は、テレビなどでも特集されるので、「急に怒り出す」「わけの分からないことをわめく」「どこかに行ってしまう」など、かなり重度な方をイメージして怖がってしまう人もいます。

実は認知症は、軽度から重度まで、様々で、症状の現れ方も人それぞれ。当社が展開する介護サービス「ケアエスコート」でも、お手伝いする方のほとんどが認知症になっています。

ただ、トラブルはなく、結婚式に参加できているのです。

「不穏」にならないように

介護現場でよく使う言葉に「不穏になる」があります。

認知症の方は、今どこにいるのか、自分が何をしているのかが分からなくなり、とても不安になることが多いのです。その状態を「不穏」といい、何度も同じ質問を繰り返したり、急に声を上げたりします。

普段生活している場とは全く違う挙式、披露宴会場では、なぜ自分がここにいるのか、とても不安になることが多いのです。明るいライトや、知らない人々、歓声や拍手が不安に拍車をかけることもあります。

「不穏」になると、険しい表情になり、ぶつぶつと呟くなど落ち着きがなくなってきます。このように様子が変わってきたと感じたら、家族が今どこにいるか伝え、安心してもらうことが有効です。

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忘れる、こだわる

今あったこと、今言ったことも忘れてしまうケースもあります。何度も同じ質問を繰り返す場合でも、根気よくお付き合いしてください。また、何かに固執することもあります。

以前、とても上機嫌だったおじい様が、着ていたドレスシャツにポケットがないことに突然気づき、
「これはシャツではない!」と急に怒り出しました。

結局普通のワイシャツに着替えるまで機嫌は直りませんでした。

こだわりが始まったら決して無理な説得や否定をせず、

①話を上手に合わせる

②そのままにする

③他のことで気を紛らわせることで、本人に安心してもらいましょう。

「スイッチ」が入ったら

認知症の方は、何かのきっかけで、急に機嫌が悪くなったり、拒否し始めたりすることがあります。

そうした「スイッチ」が入った際は、まずは家族や知人に対応をお願いするか、もし近くにいないようであれば、外に連れ出してみましょう。疲れていたりすると症状がひどくなるので、こうした気分転換が必要です。

挙式中の対応

一生の誓いの場である挙式が台無しになっては大変ですね。

前方は、次々と人が動き、式次第に沿って進行していくわけですが、何が起こっているのか理解できなくなると不安になります。挙式中に立ち上がったり、声を上げたりすれば、厳かな空気が台無しになってしまいます。

後ろの席の方が、気分が落ち着きますし、何かあってもすぐ退席できるので、ご家族にお勧めしてみるのもいいでしょう。

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結婚式は意外と大丈夫

とはいえ、認知症の方でも、結婚式という特別な場に参加すると、不思議なことに、普段よりしっかりされ、一見普通の方と変わらない様子に見えることが多いのです。重度の方でも、なんとなく楽しい華やかな雰囲気が分かるようです。

不安な顔の時は、さり気なく、

「お孫さん、きれいな花嫁様ですね。」

「ご家族はあちらですよ」

など、ご本人の視線を誘導するように手ぶりもそえて説明をしてください。家族の姿が見えることが、安心に繋がります。

親族紹介での出来事

最後に実際にあった話を1つ。

認知症がかなり進んだそのお父さんは、時には興奮されたり、妄言を吐いたりと、家族も大変心配していた様子でした。

親族紹介では、とにかく顔を見せるだけでいいと新婦やご家族は思っていたようです。

ところが、親族紹介が始まった時、実にしっかりとした態度と口調で「○○君、娘のこと、よろしく頼みます」と見事な挨拶をしたのです。その場にいた全員がびっくりしてしまうほどでした。

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もう何もわからないように思えた重い認知症でしたが、愛娘さんを想う気持ちは父親だからこそのもの。

親子の絆に大きな感動を覚えました。

 


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