教えて!カイゴ (for wedding)

ブライダル産業新聞 コラム第5回 1cmの段差でも転倒の危険性

2018.03.01

22221804_1597637243590914_4124174210632528983_n

介護の視点から見るいい結婚式の作り方
連載5

結婚式場の設備

晩婚化・高齢化が進み、結婚式においても更に高齢のゲストが増える時代に突入。
皆さんの会場の設備は大丈夫ですか?
車椅子は十分な台数を用意していますか?ブレーキはちゃんと効きますか?
式場スタッフの車椅子研修もぜひ行っておきましょう。

階段・段差・スロープ

tatemono_kaidan

エレベーターやスロープはありますか?
もし、階段しかない場所がある場合は、車椅子の方の介助が必要になります。
車椅子の持ち方など、もう一度スタッフに確認してみてください。
歩ける方でも、高齢者の場合は注意が必要です。
わずかな段差(例え1㎝でも)は要注意。
実は大きな段差よりも小さな段差の方がつまずきやすいのです。
また、マットなどの縁につま先をひっかけて転倒する危険性もあれば、
軽く傾斜になっている廊下も実は危険です。
歩行が不安定な方は、加速がつくので、足がもつれて転倒します。
(特にパーキンソン病の方は要注意!!)

以前、私がレストランを利用したあるホテルでのこと。
化粧室の入り口から壁に向かってスロープがありました。(車椅子の方には便利です)
私が手を洗っている間に、何人もの高齢女性が、
「おっとっと」と言いながら壁にぶつかっていきました。
「スロープを用意し、設備を整えた」と安心せずに、現場の様子を、ぜひ目で確認して行きましょう。

多目的トイレ・化粧室

皆さんが働く施設の会場内には、多目的トイレを所有していますか?
時々、用意のない式場に伺うことがあります。
会場内ではない別の場所を指示され、はるか遠くまでいくケースも。
これからの時代、会場内に1つ以上は欲しいと思います。
そして、ドアの開け方のチェックを忘れずに。

何かあった時に、中の本人が開けられるか、また外からスタッフが開けられるかを確認してください。
また、ホテルや式場の化粧室は暗めの照明が多く、
特に黒い壁材や床材の時は、足元の遠近感がなくなります。
視力が落ちている高齢者にとってはとても危険です。

休憩室

意外に用意が少ないのが、休憩室。
高齢になると、「人疲れ」をします。久しぶりの大勢の人々、にぎやかな音楽とイベント。
披露宴も中盤になると、皆さん、ほとんど気疲れしています。

どこかのタイミングで、個室の中でゆっくり休むことができたら、疲れ具合もずいぶん違います。
これまでに数々の会場に伺いましたが、個室まで用意されているところは稀です。
レストランでは、休憩場所さえない場合が多く、ホテルやゲストハウスでも、大抵ロビーのソファを使って休憩します。
また、個室があっても小さなソファのみのところが大半。
仮眠やおむつを交換するには使いづらいものです。

一方で、個室とその中にベッドを用意している会場があるのも事実。
新郎新婦や家族は、休憩室をとても気にしています。
何かあった際、個室で休憩できる会場はとても心強く、安心感にも繋がります。

obaasan_bed

休憩室でのエピソード

私たちが挙式から披露宴までお世話をした時の話を一つ。
そのお祖母さんは挙式までは、にこにことご機嫌でした。

ところが、披露宴中盤になると、かなり疲れた様子。
「帰りたい」と繰り返すようになったので、散歩に誘い、気分転換を図りました。
案の定、人込みから離れ、ご機嫌はかなり直ってきました。

それでもまだ、なんとなく不満そうな様子も見えたので、個室の休憩室に入ってもらいました。

ソファに横になってもらい、ご本人の話をひたすら聞きました。
お祖母さんは、人生に三つのうれしいことがあったと教えてくれました。

一つは、子供が生まれたこと。
二つ目はその子が結婚したこと。
三つ目は、その子に子供ができたこと。

couple_baby_dakko_otoshiyori

そして、そのお孫さんの結婚式がこの日だったのです。

だから、その大事な日に参列できて、本当にうれしいと教えてくれました。

このあと、お祖母さんは、すっかり顔色がよくなり、披露宴に戻ることができました。

後日、その三つのうれしいことを、家族に伝えたところ、その話を初めて知ったとのことで、大変喜んでくれました。

休憩室があるだけで、家族全員が安心できるのです。


教えて!カイゴ (for wedding)一覧
mautic is open source marketing automation