あと少し・・・あともう少し・・
新婦さんのベールに、お母さんの右手がやっと届いた瞬間、まわりにいたすべての人から歓喜の声が上がりました。背中を支えていた私たちも、涙があふれてきて、力が抜けないようにするのに精一杯でした。
お母さんの状態は、つねに体位保持介助が必要な状況で、私たちがサポートさせていただく方の中でも、特に大変なケースでした。事前準備シートには、びっしりと細かな介助方法が記入されています。
立位は両方の脇を支えて。座位はとれるけど、常時見守りが必要。意思表示は、すべて手のサインで。
指で丸をしたり、うなずいたり、おなかをたたいて見せたり。そして食事は経口摂取は無理な状態。
当日式場では、リクライニング型の車椅子を使用しました。
その朝、スタッフ2名、会場でお待ちしました。。
1か月前の顔合わせのときに、当日体調が思わしくない場合には、参加は中止にすると聞いていたので、車でいらっしゃったとき、本当に安堵しました。
衣装は留袖。着付けが負担にならないように、強く締めないようにお願いして、お着替えします。
着付けの方が上手くできるように、二人で支えたり、浮き上がらせたり。肩が外れやすいので、無理をしないようにそっと、そっと。
着付けの後はメイク室へ。そこで花嫁さんにお会いしました。
お着物姿のお母さんをご覧になり、花嫁さんは大喜び!! そして、親族紹介、ベールダウンへ。
リクライニング車椅子の上からのベールダウン。
少しずつ少しずつ、指を動かして。
そして、終わった後、お母さんは私たちに、OKのサインをしてくれたのです。
懸命に指を折り曲げて。私たちの目はもう涙でいっぱいです。
お母さんは、ヴァージンロードを一歩一歩歩き出していかれるご新婦様の姿を見届けていました。
脇の通路から、車椅子のまま、でも、凛と座していらっしゃっいました。
介護の必要な大切なご家族と
結婚式の喜びを分かち合うお手伝いをいたします。