ケアエスコートの竹森です。
私たちがご相談を受けるとき、ご家族で想いが違うことはよくあります。ご依頼がくるのは、だいたい二つのパターンになります。
①新郎新婦の祖父母をサポートしてほしい。
②新郎新婦の父母をサポートしてほしい。
①のケースは、おじいさん、おばあさんと、新郎新婦さんが、とても仲がいいケース。
小さい頃、とても可愛がってくれていた。親代わりで世話をしてくれた。など。
新郎さん、新婦さんの想いがとてもよくわかりますし、たとえ認知症になった方でも、当日はちゃんとかわいいお孫さんのことを見つめて、とてもうれしそうです。
②のケースはとても切実です。大切な我が子のハレの日。挙式や披露宴では、親としての役割やイベントもあるのに、どうしよう・・と、とても不安そうです。時には、両親ではなく、新郎新婦からのご依頼もあります。
なので、まずは、そのご不安を減らしていくために、いろいろな課題を解決していきます。そして、結婚式での親ごさんとしてのスケジュールを組み立てることもやっていきます。
私たちの仕事の配分は、どちらも、事前準備が7割、当日が3割くらいでしょうか。
そのご家族は、新婦さまが「おばあちゃん大好き、絶対結婚式は来てほしい!!」と強く希望されていました。
そして新婦さまのお母さまも、「母に、娘のウェディングドレス姿をみせたい!!」という願い。ご家族がみんな、おばあさまを大切にしていて、第一印象から、仲のいいご家族だあと感じられました。
ご家族と、打ち合わせを進めていったのですが、おばあさまが、だんだん乗り気ではなさそうな感じになってきてしまいました。
おばあさまは、病気のため色々身体に不自由なことはありましたが、気持ちも体調もしっかりされていたので、サポートさえあれば、問題ないケースでした。
式の日が近づくにつれ、「みんなに迷惑をかけたくないわ」「私は、後で写真を見るから・・」と後ろ向きな言葉ばかり。
でも、おばあさまの娘さんである、新婦さまのお母さまが「どうしても娘のウェディングドレス姿を見てもらいたいのよ。」と、おばあさまを説得してその日を迎えました。
当日、ご自宅で洋服のお着替えやお化粧の手伝いを始めました。洋服はとても素敵なレースをあしらったおしゃれなもので、「これは若い時によく着てたのよ。」と微笑まれました。
お洋服がお好きなようで、久ぶりに外出着を身につけるのが楽しそうでした。
口紅をさすと、おばあさまは、それまでのなんとなく不安そうだったお顔とは全く違う、明るい表情を浮かべ始めました。
結婚式場につくと、まずは親族控室へ。ご家族のご様子がよくわかる場です。すぐに親族の方々が寄ってきては、お話されました。
待ち時間では、高齢の親族やゲストは、若い親族の話題についていけず、少し孤立ぎみになってしまうこともあります。(それをカバーしてお話し相手になるのも私たちの役目です)。このご家族は、本当に全員でお話されていて、ああ素敵なご家族だな・・という印象でした。
挙式では、おばあさまは、最前列の一番端に車椅子に座っての参加でした。
式の流れや新郎新婦さまの様子を車椅子から身を乗り出すようにして見つめていました。新婦さまの姿をずっとずっと見つめて、今までとは全く違う、本当にうれしそうな顔。
でも、結婚式では、新婦はとても忙しいものです。挙式だけだと、ゲストとゆっくり話す時間はほとんどありません。なんとか、おばあさまと新婦さまがお話できる時はないかと考えました。
フラワーシャワーのあとに、式場スタッフに、「おばあさまと新婦さんで写真を撮ってくれませんか?」と頼み、お二人が近づける場を作ってもらいました。
おばあさまは、ウェディングドレス姿の花嫁さまに直接話しかけることが出来て、本当にうれしそうでした。
帰路、おばあさまは、うとうととされるかなあと思いましたが、しっかり起きていらしてました。
「大丈夫ですか?」と伺うと、逆に「あなたたちも疲れたでしょう。」と微笑まれました。
そして、「本当に行ってよかった・・・。行けてよかったわ。」とおっしゃって下さったので、こちらも安堵しました。
ご帰宅後、お着替えしていただいた後、リビングでゆったりされました。そして、古いご家族の写真を見たいと、希望されました。ゆっくり丁寧に、いろいろな写真を食い入るように眺めていらっしゃいました。今日出席されたゲストの方々もそこには写っていて、「皆様ご出席でしたね」というと
「そうね!!若い頃がバレちゃうわね!」と嬉しそうにお話になられました。
おばあさまは、お若いころ、とてもしっかりされていて、活動的な方のようでした。家の中には、お仕事での写真や旅行やご家族の写真が飾られていました。
ただ、今、年齢が高くなり、ご病気でお身体が不自由になられてしまいました。最近では長時間の外出や旅行はできないご様子です。
結婚式に参加されることへの抵抗感は、若く元気だったころの自分と、今の自分とのギャップ。
以前の自分を知っている親族やゲストに会うことへの心のハードルが高かったようです。
でもこの結婚式で、たくさんの知り合いの前で、毅然とした姿を見せることができました。
そして、なにより、かわいい孫娘さんの花嫁姿をその目で見ることが出来たのがとても嬉しかったようです。
ケアエスコートの仕事をしていると、介護をさせていただく方のためらいの気持ちを感じます。結婚式が華やかな場であればあるほど、その気持ちは複雑のようです。
お祝いをしたい、晴れ姿を見たい。
でも、自分の姿はどうなのか?ハレの日にふさわしいのか?
その高い気持ちの壁を取り除いていくのも、私たちの大切な使命と思っています。
介護の必要な大切なご家族と
結婚式の喜びを分かち合うお手伝いをいたします。