新婦さんも新婦のお父さんも、日曜日しか時間が取れない。でも花嫁姿を、お祖母様に見てもらいたい。何としても。
お祖母様の生活リズムは崩したくない。体調に何かあったら大変だもの。
揺れ動く新婦さんの気持ち。
でも、でも、「絶対、祖母に結婚式に来てもらいたい。」
結婚式の1か月前でした。
「祖母に結婚式に来てもらいたいから、お願いします。」
新婦さんからのお申し込みでした。
その翌週、私たちは、お祖母様を訪ねていました。
介護施設内を案内され、お祖母様の部屋に着きました。お祖母様は、なんとなく緊張気味のご様子。口数が少ないなあ・・という印象でした。
スタッフさんにご状態をうかがっていくと、大丈夫かな?心配だな・・と思う点が色々ありました。幸い、ベテランの施設長さんが協力してくださり、一つずつ解決していきました。
お祖母様は、挙式だけの参列。
とはいえ、挙式が終わるまでは、かなりバタバタするのがいつものこと。分刻みのスケジュールだし、暑い中の結婚式。
だけど、「出席する予定のイベントは、すべてできるようにサポートする」これが私たちの第一の目標としました。
お話をしていくと、新婦さんのお祖母様への思い・・
「ああ、おばあさまが大好きなんだ・・」が、どんどん伝わってきました。
結婚式会場との打合せも入念に行いました。車椅子のお客様の動線に会場側が慣れていたので、話がスムーズに進みます。スロープの準備や、その他の相談に、前日まで本当によく対応してくださいました。本当に心強い式場さん。
結婚式当日。
私たちは、少し早めに到着し、婚礼スタッフさんへ挨拶します。結婚式会場の扉を1歩出ると、サンサンと太陽の光が降り注いでいます。
ハレの日のふさわしい、快晴!!
定刻より少し早めに、お祖母様を乗せた車が到着しました。
はれやかな、優しい笑顔のお祖母様。
ご家族からお荷物を受け取り、一歩中へ入ると、分刻みのスケジュールのスタート。
髪を整え、お化粧のお手伝いをしていくと、ハッキリした目鼻立ちのお祖母様が、さらに華やぎました。ほんとうに上品な笑顔で、私たちにも笑いかけてくださる。
新婦さんのご希望で、挙式前にブライズルームにお連れしました。純白のドレスに身を包んだ新婦さん。
お祖母様が眼に入った瞬間、新婦さんの大きな瞳から大粒の涙があふれてきました。
お祖母様は毅然として、「泣かないの!」と、一言。
まさしく、愛情深く、この新婦さんを見守ってきたからこその一言。私の胸もきゅんと熱くなってしまいました。
今こうして、お嫁に行く姿をご覧になって、お祖母様も感無量の表情。
生まれた瞬間から・・優しく、大切に、時に厳しく。大事に大事に育てたお孫様。
ご両親への感謝の思いとはまた一味違っているんでしょう。新婦さんとお祖母様の素敵な関係をあらためて感じてしまう。
親族紹介・・・写真撮影・・・と穏やかに式が進んでいきます。
挙式でのお祖母様の席は、当日、決めることになっていました。チャペル担当者にお願いしたかいがあって、ベンチシートの配列を変えていただけました。最良の場所に車椅子席が整い、新郎新婦さんをより近くに感じてもらえます。婚礼スタッフさんが、こちらの思いを察してくれたお陰です。さすがです。
「おばあちゃんに、こんなにいい席で見てもらえるとは思ってもみなかった!」
とっても嬉しいお祖母様からのサプライズとなったようです。
あとは、ガーデンパーティ。ちょっと炎天下で体調が心配でしたが、ゲスト全員での写真まで参加できました。ここで、お祖母様は先に帰る予定。
お祖母様に挨拶をしたい・・・との新婦さんのリクエストで、ブライズルームへお連れしました。
お別れの時。
新婦さんは名残惜しそうに、お祖母様を抱きしめます。
お祖母様が、今まで、新婦さんにそうしてくれていたんだな・・・。
真っ白いドレスの中に、すっぽり、お祖母様が包まれて・・・しばらくそのまま。
新郎さんも静かに見守っています。
お祖母様の中では、いつまでも小さな子どものままの新婦さんなんでしょう。
新婦さんも、子どもの時分に返ったように、大好きなおばあちゃん・・・お世話になったおばあちゃん・・・
きっと並べきれない言葉の代わりに、きゅーと抱きしめていたのでしょう・・
おばあちゃんに伝わっていますよ。周りの私たちにも伝わったのですから。
帰りがけ、お祖母様が教えてくださいました。
「あの子は、おばあちゃん子でね。」
「今もよく遊びに来るんですよ。そして、お料理を作って来てくれるんです。」
やさしい新婦さん。これからは、新郎さんも一緒で、もっと、にぎやかになりますね。お祖母様は、本当に満足そうに笑っていました。
家族の温もりって本当にいいなあ。
お祖母様は、帰りの車の中で、穏やかに、外の景色を みぎ ひだり と見渡しています。上品な凛とした横顔がとっても印象的。
車に乗り慣れていないと伺っていたので、心配でした。
ひんやりスッキリするので、ウェットティッシュをお渡しすると「もういいわね。」とお顔を拭いて化粧を落されました。お祖母様の楽しい話に、車の中に笑い声が響いて、そうこうしているうちに、施設に到着していました。
帰りの私たちは、無事に終わった安堵と、お祝いの余韻にしばらく浸っていました。
まるで、自分の結婚式だったみたい。
そこには、親に感謝を伝えたくなっている自分がいました。
そして、毎回思います。
お祝いの席に、このような形で、立ち会わせてもらうご縁って、すごいな!と感謝せずにはいられない。人が出会って、結ばれていくって、本当に素敵。
「おばあちゃん、来てくれてありがとう・・・」
新婦さんのあのうれしい笑顔が、脳裏によみがえってきて・・・。こっちが泣いちゃいます!!
そしたら、お祖母様が「泣いちゃダメ!」っていうのが聞こえてきました!!!!
介護の必要な大切なご家族と
結婚式の喜びを分かち合うお手伝いをいたします。