結婚式では、新郎新婦の母や祖母は黒留袖を着ることが多いようです。では、もしも介護がいる場合だったら? ケアエスコートでも、そのご要望があるので、要介護でも、着物が着られる?注意するところは?をお伝えします。
ただし、本当は洋装のほうが、ご本人にとっても介助者にとっても圧倒的に楽です。着物や留袖でなくてもいい方はこちら↓↓
「高齢の祖母の服装はコレ!」結婚式で恥かかない!疲れない!15個のポイント
今回は、介護状態・寝たきりだけど留袖を着たい!という方や、介助する親族のかたへ、ポイントをお伝えします。
結婚式で着物を着ることはこんな感じなのだ・・・と予想して、それでも大丈夫でしたら、ぜひ。黒留袖は、日本女性の第一礼装で、格式高い雰囲気になり、華やぎます。
一般的に、美容室で着付けます。式場に美容室があれば、一番おすすめです。
美容室を併設していない教会やレストランでお式を行う場合は、式場に近い美容室や行きつけの美容室へお願いすることになります。
できれば、結婚式の時間配分やブライダルでの見せ方を良く知っているブライダル専門の美容師さんがいる美容室がお勧めです。早めに問い合わせをし、段取りを確認すると良いでしょう。髪型・アクセサリーについても相談でき、着崩れしたときのなおし方などもアドバイスしてもらえます。
多くのサロンでは、着付けの部屋とヘアメイクの部屋は分かれています。
畳や絨毯の部屋が多いようです。なので、車椅子で入る場合は、許可をもらっておきましょう。土足厳禁の場所が多いので、車椅子のタイヤは、拭いて入りましょう。
汚れても良いタオル1枚と、それを入れるビニールを、カバンに入れておくと便利です。もしなければ、ウェットティッシュでも良いですが、乾いたティッシュは、タイヤの凸凹で、細かくちぎれて床に散乱してしまいます。
一般的に、着付けとヘアメイクの予約時間は、集合時間の2時間前が多いです。かかる時間は、着付けに30分~40分 ヘアメイクに20分~40分が目安です。
でも、車椅子に乗ったまま、着付けをすると、この1.5倍~2倍の時間がかかります。かかる時間は、着付けだけで45分~80分 と思ったほうが良いです。
4人がかりで行っても、結構かかるので、時間にはかなり余裕が必要になります。
親族紹介、挙式や披露宴のスケジュールの時間の確認して、余裕を持たせましょう。
着付け師さんに任せっきりにするのではなく、必ず介護者が付き添います。そして、着付け師さんのお手伝いをします。
車椅子での場合、どのくらいのサポートが必要になるかをケアエスコートでの流れで説明します。
通常は、着付け師さんと補佐の方、ケアエスコートスタッフ2名の合計4人で行います。
流れ(一例)
前もってトイレは必ず済ませておきます。パットやテープ式のオムツはもれないよう工夫しておきます。
①予約の時間に美容室受付へお連れし、名前の確認
②土足不可の場合は、車椅子のタイヤを拭いてから室内へ
③着ているものを脱ぐサポート
④着物用肌着を着るサポート
ここから着付け師さんの動きを見ながらサポートをします
⑤車椅子に座った状態で両方の袖を通す
⑥裾部分を、本人の背中と背もたれの間へまとめる
⑦裾を下へさげるため、立つ介助をする。抱きかかえた状態でキープし、もう一人は、とっさに動けるよう補助をする
⑧介助で立っている間に、裾を下げる人と背中心を合わせる人に分かれ、同時に進める
⑨下前・上前をあわせ、腰ひもをまわすため、介助して背中を浮かす。もう一人は、その反動で前にのめらないよう膝を抑えてサポート。
⑩衿合わせをして、腰ひもを結ぶ
⑪すわったまま、⑤~⑩の長じゅばんと同じ手順で行う。身体の後ろ側でもたついている着物を、前へたぐり寄せる
⑫伊達じめを締めるため、背中を浮かす人と膝を支える人にわかれ、同時にサポート。
⑬すわったまま、作り帯を身体へまわし、背中を浮かすように介助する
⑭帯締めを、お太鼓の中へ通す時は、背中を浮かせるので、膝を支える。帯締めを通す人と帯締めが通ってくるのを正面で待つ人に分かれて合わせる
⑮帯揚げをキレイに整えて、帯が出来上がり
⑯かかとを支える人と履かせる人に分かれて安全に介助する。こはぜは、全部留めず、下から2か所留めるだけでOK。
車椅子の場合は、写真の時だけ、履いてもらうので、持ち歩きます
膝の上へ置いてもらいます。エナメルのカバンは、落とすと傷がつきやすいので、気をつけてあげてください
レンタルの場合、美容室から渡された風呂敷や袋へ収納します。自分で管理するのは大変なので、クロークへ預けます。
車椅子上で着付けをする場合、介助者が気をつけるポイント
時間は、20分~40分ほど見ておいたほうがいいでしょう
美容室は、車椅子のまま対応してくれるところが多いです。以前、美容室では、美容室の椅子へ座ってもらいたい、と言われたことがありましたので、車椅子のままで、ヘアメイクしてもらえるか、必ず確認しましょう。
着物を着た方の車椅子を押すときは、着物の裾・袖が、車椅子の諸パーツに引っ掛からないようにしましょう。移動の前に、腰ひも・帯揚げ・帯締め・帯が、垂れ下がってないか、確認しましょう
着物や留袖を着た高齢の方の場合は、移動に時間がかかります。
着物で草履の場合、靴で歩く時よりも歩数は多くなり(歩幅が小さくなるから)時間がかかります。介護が必要な方は、さらに小股でゆっくりになります。車椅子で押してもらう場合もあまり早く押すと、怖くなってしまいます。
他のゲストの歩く速度の2倍かかると考えて、早めに移動しましょう。当日の移動はだいたい下の8箇所です。
・美容室
・親族控え室
・挙式会場
・披露宴会
・お化粧
・フォトスタジオ
・更衣室
・休憩室
着物で過ごすことをイメージし、動線を考えておきましょう。
車椅子の場合、車で来るとしても、多少は車椅子で外を移動することがあります。
車椅子に乗った場合、全長(車椅子後輪からフットレストまで)90~100cmほどあります。大きめの傘があると助かります。また、ショールを被ったり、ひざにレインコートなどをかぶせると着物を守ることができます。
また、足元も飛び跳ねが気になりますので、足袋は予備があると良いですね。
お天気が悪い時は、ぜひご用意してください。
車椅子の方の排泄ケアは、2名で行うとスムーズです。
トイレでは袖や裾が便座の中に落ちてしまわないよう、袖の裾を帯へピンチで留めます。(クリップや簡単にはさめるものでも大丈夫です。)
裾は着物と長襦袢の裾を一緒に持ち上げ帯を包むように持ち上げます。
オムツ交換が必要な場合は、休憩室の用意がいります。ベッドや横になれるソファがあるかどうかの確認もしておきましょう。
会場内に休憩室がない場合は、リクライニング式やティルトタイプの車椅子を手配します。車椅子の背を倒すことが出来るので、おむつ交換ができます。
車椅子で、草履をはいていない場合は、写真撮影に忘れずに履かせてあげましょう。
また、着物の着付けがちゃんとできているか確認しましょう。
写真撮影でのポイント
帯にきちんとさされているか確認します。
着ている時間が長いとお太鼓も乱れがちになります。車椅子に座っている場合はみえることはあまりありませんが、形は常に整えて。帯のタレはめくれやすいので、気をつけましょう。
穂先がぶらぶらしがち。お祝いの席では房が上を向くように挟み込みます。お祝い事は、房が上向きです。
正面の中央で本結びし、結び目を綺麗な長方形に。帯揚げの両端が出てきやすいので帯の中へ突っ込みます。
車椅子に座っていても、あわせがずれやすいので、足が見えてないか確認。
おはしょりで裾の長さは調整できます。お化粧室で鏡を見ながら、丁度良い位置まで内側を上方向にひいてみましょう。短くしすぎて、長襦袢がのぞかないように。
首の後ろ中心にきているかつねに確認してあげてください。
食事では、半襟への汁の飛び跳ねや食べこぼしに気をつけて!!
席にあるナフキンだけでは心配な場合は、簡易の不識布エプロンや無地の白いハンカチを1枚お食事用で準備しておくと便利です。
着物でいることは、やはり疲れます。できれば、休憩室や個室を用意していたほうがいいでしょう。
もし、披露宴では着物を脱ぎたい場合は、パンツスーツやドレスも持参しておくと、疲れが違います。また、着物のまま休む時は、そのままベッドへ仰向けに寝ていただけば、意外と着崩れることはありません。
着物が着崩れすると、だらしない印象になります。早め早めに、介助をする方が、必ず見てあげましょう。
鎖骨のくぼみより上で、重なっていれば大丈夫。下に来てしまったら、左の身八つ口から手を入れて、右の共衿を軽く引きます。左衿は右わきの帯の下の地衿を引きます。
結び目が浮き上がってきていたら、キュッと中へ押し込んで。挟みこんだ先端が出てきていたら、折りたたんで、帯の中へしまっておきます。
房が垂れ下がってきたら、房が上を向くように、わきで挟みこみます。おめでたい日は、房は絶対上向きです。
すわっていると見えませんが、帯のたれ先が出てきてしまうと、帯がほどけてくることもあります。排泄ケアの際に確認しましょう。たれ先は、手先とともに、帯締めで押さえこんであるので、一回出てしまうと入らないかも。応急処置をして、崩れがひどく、だらだらになってしまったら、迷わず、その場所にいる、結婚式場のスタッフさんに相談してください。
レンタルの場合は、くしゃくしゃに丸めていなければ、たたみ方は、気にしなくても大丈夫です。自分の衣類をしまっていた、風呂敷や袋へしまいます。腰ひも・扇子・帯揚げ・帯締め・衿芯など、小物の入れ忘れに注意しましょう。
一般的に 家紋は、背中、両胸、両袖の5箇所に入っているものと言われています。ただ、最近はレンタルが多く、家紋を気にされる方はあまり見かけなくなったようです。
黒留袖の特徴は、地の模様がない縮緬で、胸に柄はなく、裾に模様があるものです。オールシーズンは袷(あわせ)、6月と9月は単衣(ひとえ)、夏は絽(ろ)(透け感のある生地でフォーマル用)ですが、今はお式場内もエアコンがきいており、移動もお車のため、どの季節でも、袷(あわせ)でもいいかもしれません。ただ、地域や家によって、変わりますので、両家で確認したほうがいいでしょう。
また、新郎新婦の母以外の方が、黒留袖を着る場合は地域ごとに考え方がちがうようです。慣習に詳しい年長者や式場担当者に相談してみましょう。
店頭とネットでは、レンタル料金が違うのかな?と思って「晴れ着の丸昌」さんでみてみました。確認した時期では、標準レンタルの品物が、ネットでのレンタルでは、2万円ほど、安くなっていました。小物もレンタルの中に含まれています。
中には、直に肌に触れる足袋・肌着は新品のものをプレゼントしている店もありました。
上記のレンタル商品では半襟が長襦袢についてあるので手間がかかりません。
バックや草履は別のようなので、確認が必要です。
足袋だけは、念のため、届いたらすぐに履いてみてください。コハゼが留まるか、足にフィットするか、確認しておきます。
足袋は靴のサイズから0.5cmマイナスした大きさがいいそうです。
午前と午後では足の大きさが多少違います。お式が長時間になると足の浮腫みが出てくることも考え、伸縮性のあるものがお勧めです。
キャラコ(綿100%)の足袋を購入する場合は、伸縮性がないので履いてみたらコハゼが留まらなかったという事もあります。コハゼはピタッと履くため2段階ありますが、やはりナイロン製で伸縮性のあるものがおすすめです。
足袋はフォーマルの場合、足首が見えないほうが美しいとされ、5枚コハゼでという地域もあったようですが、最近では4枚コハゼでも問題ないようです。
基本はしわが寄らないようにぴったりと足袋は吐くのが美しいとされていますが、介護が必要な方には、緩めのものや伸縮性のあるものがおすすめです。
色は絶対 白で。
白地に金か銀の布地 またはエナメルがお勧め
かかとは4~5cmの高さで。
レンタルの場合は、鼻緒がかたく、親指の付け根が痛くなるかもしれませんので、おうちの中で履いて慣らしておきましょう。
鞄は着物や草履にあった鞄で。ただ、新郎新婦のお母様は、持ち物が多く、鞄にプラスして、大きめのバックが必要な場合があります。淡い色味か、黒がお勧めです。
足袋の中素材が、ネル生地やフリース素材で加工された足袋があり、1,000~4,000円くらいの価格です。
肌襦袢の下にヒートテックを・・と考えてしまいがちですが、後身頃の襟ぐりが大きい物を探さないと衣紋(えもん)から下着がのぞいてしまいますので要注意です。
会場の空調は、かなり快適な温度が保たれているので、防寒としての肌襦袢の下に着る着物専用の下着はわざわざ購入しなくても、十分快適に過ごせます。
ただ、体感温度は人それぞれですし、お庭でのパーティなどは、冷えやすいので、後ろ身頃が大きくあいている下着を準備しておきましょう。
更衣室で着がえ、簡単にたたんで、物品がそろっているか確認しましょう。軽くたたんで更衣室へそのまま置いて返却完了のところが多いようです。
式場で着がえるより、そのまま黒留袖のまま帰宅したほうが、着替えを持ち歩かなくてすみます。自宅で着替え、宅配便で返送。
お式後、その美容室へ直行して着替えて返却。
レンタルの場合には、物品リストがあるので紛失しないように、当日の荷物と一緒にしておきましょう。末広などの小物は紛失しがちなので、自分の鞄の中身のチェックも忘れずに。
借りるときに保険の加入を勧められますので、どこまで補償されるのか確認しておきましょう。1,000~2,000円ぐらいなので、払っておけば、想定内の汚れは補償をしてもらえるので、クリーニング代金と思えば安いですし、安心です。着物をクリーニングに出すと丸洗いで10,000円以上する場合があります。
サポートや介護が必要な方が、着物や留袖で結婚式に出席するときの注意点
・ホントの本当は、洋装で、それもツーピースがお勧め。
・着付けの美容室は、できれば、結婚式会場で。
・介護が必要な方の着付けは、多めの時間と介助する人が必要。
・移動に時間がかかるので、時間は多めに計画しましょう。
・移動の動線もしっかりチェック。
・雨の日はそれなりの準備を。
・トイレ用に、裾をあげるピンチがあると助かります。
・オムツ交換は、休憩室かリクライニング車椅子の準備を。
・写真撮影の前は草履と着物のチェック。
・お食事用に念のためエプロンやハンカチなど用意しておくと安心です。
・早めに直して、着崩れを防止しましょう。
・レンタルを上手に活用しましょう。
介護が必要なお母様や80代、90代のおばあ様でも着物や黒留袖で結婚式に出たい・・・と思われている方は多くいらっしゃいます。
私たちが、洋服の相談を受ける時、「本当は黒留袖を着たい・・。」「介護状態では無理だと思っているが、どうですか?」また、「どうしても黒留袖で出たいので、手伝ってほしい」という質問をいただきます。
確かに、着物での結婚式出席は、結構大変で、思っている以上に介助者に負担がかかります。でも、しっかり準備して、ぜひ願いを叶えて差し上げたいですね。
介護の必要な大切なご家族と
結婚式の喜びを分かち合うお手伝いをいたします。