ケアエスコートでの打合せの時、当日着て行くお洋服と同じくらい(もしかしたらそれ以上)相談が多いのが、「どんな靴を用意したらよいのか」というもの。
介助のために、お洋服を確認したあと、「靴は何を履かれますか?」と伺うと、「それを今日相談しようと思って・・」というケースがとても多いです。
ご高齢でほとんど外出しなくなり、靴自体あまり履かない方や、マジックテープやファスナーのついた介護靴しか持っていない方もいます。
実は、それでもいいのです!!
理由は、高齢者の場合は、心臓などの疾患から足がむくんでいたり、外反母趾があったり、関節の病気などで足の形が変形している場合が多いのです。爪も全般に固くなっているので、固い革靴は長時間の披露宴などでは、苦痛です。
よく「足が疲れた」と言いますが、「手が疲れた」とはあまり聞きません。人間の体を支える足は大事な部分。ぜひ、負担のない足元にしてあげてほしいと思います。
80歳、90歳代のおばあさまの場合は、ご家族が用意することが多いようです。「おばあちゃんでも、フォーマルな場には、ちゃんとした靴じゃないとだめですよね?」「祖母の代わりに買いに行きたいけれど、何を買ったらよいかわからない」と相談されます。
そして「結婚式へ出席するので、新しく(細身の)パンプス(革靴)を準備しました」というご家族も。結婚式当日までに何度か履いておくといいのですが、だいたいの方が初めて実際に履くのが、結婚式当日。これって、けっこう危険です。
私たちは、経験上、たとえ結婚式やフォーマルな場でも、なるべく普段履いている靴・履き慣れている靴が一番いいと思っています。(もちろん、履き古しているとか・色が当日お召しになるものと合っていないなどは、NGですが。)
でも、大切なお呼ばれ。孫の結婚式。来賓の方も来てるし・・・。ここは結構迷うところです。シニアや高齢者の結婚式での靴はどうすればいいでしょう?
もくじ
・シニアや高齢者の靴の選び方 8つのポイント (女性の場合)
・男性の場合
・高齢の方でも履きやすいでも履きやすい靴
・歩くのが不安な方、要介護の方は介護靴
・車椅子の方
・写真撮影や、ゲストの前に出るとき、どうするの?
・私たちの「困った!!」体験談
・ストッキング ソックス
・足元まわりの物
・防寒対策
・転倒事故に気をつけて!!
ヒールが高いと転びやすかったり、ひざが痛くなりやすいです。
普段よく歩いている方でも、ヒールの高いものは、避けたほうが無難です。高齢になれば背中や腰が曲がったり、左右どちらかに傾いたりして体幹バランスも変わってきますので、できるだけ足底が地面にしっかりとつく形状のものを選びましょう。
変形性膝関節症は、60歳以上になると増えてきます。特に圧倒的に女性が多い疾患です。主な症状は膝の痛みと水がたまることですが、突然鋭い痛みで、歩けなくなることもあります。高めのヒールをはくと、今まで症状がなくても、いきなり痛くなり、全く歩けなくなることがあります。
知人(50代後半)は、久しぶりにパンプスでショッピングに出かけたところ、街中で急に膝が痛くなり、動けなくなって、両脇を抱えてもらってなんとか家まで帰りました。大切な日ですので、低めの靴がお勧めです。
中敷きがしっかりある履き心地がいい物を。疲れ方が違います。
フォーマルな場は、めったにないからリーズナブルな価格のもので・・と思いますが、それでも、履き心地は重要です。電車や徒歩では、思っている以上に歩く距離があります。タクシーで来場の場合でも、会場内では移動があります。
脱げるのを防ごうとすると、歩き方がおかしくなり、足に余計な力がかかります。
かかと部分が、ある程度、硬さと高さのあるもの選びましょう。かかとや足首をしっかり包んでいると、脱げやすさの防止になるからです。高齢の方は柔らかいものを好む傾向にありますが、柔らかすぎたり、かかと部分の高さがないと脱げやすくなるので、注意してくださいね。
試着の時、お店の中を数歩、歩くだけだと、脱げやすさが確認できません。いざ買って、街中を歩くと脱げやすいことに気づくことがあります。足元が不安だと、どっと疲れてしまいます。お店でしっかり歩いて確認してください。ストラップがあるタイプは脱げにくく、安定して履けます。
できるだけ軽い靴を選び、足にかかる負担を減らしましょう。
足の筋力が落ちてくると、足が上がりにくく、すり足で歩くようになるため、段差や凹凸でつまずきやすくなります。本人や家族が気がつかないうちに、すり足気味になっています。靴が重いと、足を上げにくく、疲れやすくなります。
つま先が上になっているものを選びましょう。
すり足で歩く様になると、つまずきやすくなるので、靴のつま先がやや上に反っているほうが安全です。選ぶときに、横から見て、つま先が上になっているものを選びましょう。
溝が深いと滑りにくく、安定します。
磨り減ったり、溝のないつるんとした靴底のものは、雨の日や、地面が濡れているとき、とても滑りやすく危険ですよ!! 転ぶと、骨折して大変なことになってしまいます。
また、つま先から1/3程度の所まで、靴底が曲がりやすいかチェックしてみましょう。ゴム底だと親指の付け根あたりの足裏部分が曲がりやすく、しっかりと地面を踏み、スムーズに歩く事ができます。
マジックテープやファスナーなどで簡単に足を固定できるタイプが理想です。
高齢になると、屈む姿勢がつらくなり、靴の脱ぎ履きがしずらくなります。足を差し込む間口が大きく開いているほうが履きやすいのです。
サイズに迷ったら、少し大きめのサイズのほうがお勧めです。
できれば、靴を履くご本人もお店に行って、靴を履いたまま、少しその場を歩き回ってみます。高齢者は、むくみやすく、足の形が変わることが多いのです。例え、サイズが大きすぎても、中敷(インソール)で微調整する事もできます。
革靴が一般的ですが、日ごろ履いていない方は、早めに取り出して、履けるかどうか確認してください。足の長さは変わっていなくても、入らないことがあります。
また、日ごろ履いていないと、皮が固くなって履きづらくなっていることもあります。
最近では、革靴風のウォーキングシューズや介護靴も売っています。
若い方でもそうですが、慣れない固い靴で長時間の外出は苦痛です。
そして、ご高齢の方はがまん強い方が多く、フォーマルな場だと、痛みや苦痛を訴えない方が多いのです。(そして、訴えられない方もいらっしゃいます)
東京の吉祥寺東急1階の婦人靴売り場ボンステップで、ストラップシューズで履きやすそうな靴が目に留まりました。
「結婚式で靴を買ったとして、その後も普段履きになりそうな、見た目もおしゃれで華やか、履き心地も良いもの」と店員さんに聞いて、ご紹介頂いた靴を履かせていただきました。・・こちら。↓↓ボンステップさんのシューズです。
センターにシルバーがアクセント。春先ごろのお式にぴったり。淡いお洋服に合いそうですね。
ストラップ部が折り返しタイプなので調整の幅が広くとれます。靴の中敷きも弾力があって、軽い靴です。
内側の金具にストラップが通してあるので、調整が楽です。マジックテープが外れても、靴が脱げにくいそうです。
ふだん布製のシューズに慣れていると、結婚式でも、あらためて革靴を履くのは、とっても窮屈に感じてしまうそうで、あまりお勧めできないそうです。 今回ご紹介したボンステップさんの物は、ヤギ皮・ヒツジ皮製なので、とても柔らかく、普段布製の靴で過ごされている方でも、違和感なく履けるそうです。
靴のサイズと巾 Eって???
今回の試着した靴は、どれも23.5cmでした。でも、店員さんは、「こちらは3E、こちらは4E。」と言って準備してくれました。
その表示の違いがよくわからなかったので、「3Eって何でしょう?」と聞いてみました。
スタッフさんによると、「足の親指の外反母趾の骨と、小指のつけ根を結んだ、足の外囲。つまり、足の幅のこと。JIS規格(日本工業規格)で決まっているそうです。3Eのほうが、4Eより幅が狭い。JIS規格ではあるが、各メーカーさんによって多少サイズが違う」だそう。東急吉祥寺 1階のボンステップの店員さん、本当に親切でした。
要介護で、歩くことがかなり不安な方や、高齢者施設に入所され、ほとんど外出しない方は、思い切って介護靴でもいいと思います。
介護靴は「履きやすい・履かせやすい・安全」これが基本。
最近では、介護靴でも、機能性や安全性はそのままで、素材や色、デザインなど、とてもお洒落な物が増えてきました。(男性用、女性用ととも)
お出かけやフォーマルな場にも、気兼ねなく、安心して履いていける靴が増えいます。
出来れば、結婚式でも介護靴を勧めたい理由
自分で履くことのできる人は、腰をかがめたり、紐をほどいたりという動作が加わり、その時にバランスを崩してしまいます。
介護靴は、ファスナーやマジックテープでの開閉になっているので、靴を履くときに転倒の危険を減らすことができます。
ご家族が高齢者に靴を履かせるというときに、とても楽に靴を履かせることができます。他人に靴を履かせるというのは意外に難しいものです。(間口がせまい男性の革靴は特に履かせにくく、靴ベラが必要です)
ここでは、介護靴の「あゆみシューズ」で有名な徳武産業株式会社 さんを参考にさせていただきました。
■軽量タイプ
超軽量タイプ、とにかく軽くて履きやすい
【ラ・フィット 201】
■外反母趾タイプ
体重移動を楽にして、母趾の変形による痛みを緩和します。
【ウイングストレッチ】
■フォーマルな席に合いそうなタイプ
他にも、和柄の物まであります。最近ではデパートの介護用品売り場などでも取り扱いしている場合もありますし、ケアマネージャーさんに相談して、身体の状態に合わせた靴を選択してほしいと思います。
片麻痺の方や、装具をつけている方など、左右のサイズが違う場合があります。福祉用具の靴では、片方ずつ買うことが出来るので、ぜひ探してみてください。
「結婚式では、車いすに乗って歩かないから、フォーマルな物(ヒールや革靴)で」と思われるかもしれませんが、履きなれた靴がお勧めです。例え、一日中、車椅子の方でも、履きなれない靴を長時間履いていると、普段の何倍も疲れやすくなってしまいます。あまり立たないから大丈夫・・なんてことはありません。
車椅子に乗る場合は、足の位置に気をつけて。
披露宴などの長時間の場合は車椅子の方の場合は、フットレスト(足を乗せるところ)にずっと足をのせたままですと、姿勢がつらくなってしまうので、適度に足を床に降ろしてあげることも、負担軽減になります。
フォーマルな靴を持参して、結婚式の間は介護靴を履いて過ごすという方法。写真撮影の時にだけ、そのフォーマルな靴を履いて撮影。
ケアエスコートでは、靴は当日私達がお預かりして、挙式の集合写真の整列時に、サッと介護靴から履き替えて頂くこともあります。満足そうに笑顔で写真撮影されます。
私達のお客様で車椅子の方の場合は、この方法でお手伝いさせてもらうこともあります。以前、寝たきりの方で、普段モコモコのスリッパをはいているからと、当日そのスリッパを履いてご出席。でも、ひざ掛けで上手くカバーしたので、全く問題ありませんでした。
式当日、入院中の病院へ伺うと、「式場に着いたらこの靴を履かせてください」というメモと共に、以前履いていたという革靴が用意されていました。病院から式場までは、普段履いている介護靴を履いて頂き、革靴は私達が持って出発しました。
式場に着き、お着替えも終わり、あとは靴だけ・・・・と、足先を革靴に入れようとすると、どうやっても、足が革靴に入らない・・・!!!。
細身で硬い素材の皮靴に、むくみがあって丸みを帯びたお父様の足。どう頑張っても入るはずがありません。涙・・・。
寝たきりや車椅子での生活が長くなると、歩く機会も減り、足がむくんだり形が変わったりするもの。足のサイズ自体は変っていなくても、足に合わなくなることも。(革靴の皮自体が縮んで小さくなってしまうこともあります)
このお父様の場合も、「ほんの数年前、仕事をしていた時に履いていた革靴だから大丈夫と思って、特に試し履きもしなかったわ・・・」と奥様。ちなみにこの時は、式場にお願いして、二回り位大きいサイズの靴を貸して頂き、事なきを得ましたが・・。
久しぶりの靴や、新調した場合は、必ず一度、試し履きをして下さいね!!(細身で伸縮性の少ない革靴は必須です!)
ある新郎様のお母様を、宿泊先のホテルへお迎えに行った時の事。
お着替えもお部屋の片づけも終えて、あとはタクシーが来るのを待って出発!となった時、お母様の履いていた靴の底がベリッと半分はがれてしまう!!という事態が起きました。ご自宅を出てくる時には、すでに違和感を感じていたようなのですが、あまり確かめずにそのまま出てきてしまったそう。
車椅子を使わずに、自分で歩かれるお母様だったので、このままでは、はがれた靴底がひっかかり躓いたり、転んだりしてとても危険ですよね・・。
私達スタッフとお母様で、急いでホテル向かい側にあるデパートに行き、靴を購入。それに履き替えて頂き、これまた急いで式場に向った、というエピソードでした。
①ゴム口のゆるい物・・・・ソックスを選ぶときは、ソックスの口が、ゆるめのものを選んでください。結婚式は、挙式、披露宴と続き、まる一日のイベントです。夕方には、足がむくんで、ソックスのゴムのあとがクッキリついていることもあります。最近ではゆるめの物を売っていますので、そちらを用意しておくといいですね。
②なるべく長めの物・・写真撮影の時に、ズボンのすそが上がるので、長めを選んでください。
ひざ下ストッキングで。高齢の女性の場合、パンティストッキングは、だめです。お手洗いの時に、手間取ってしまいます。
洋服での注意はこちら ↓↓↓
「高齢の祖母の服装はコレ!」結婚式で恥かかない!疲れない!15個のポイント
行く寸前まで覚えていても、うっかり玄関に置き忘れることも多い杖。歩行が不安な方は、ぜひ他の荷物と一緒に置いておきましょう。
新幹線や飛行機で遠方から移動するときは、スリッパがあるとくつろぎます。一緒に行く方はぜひ持って行ってください。
新調の靴は、靴ずれができやすいので、用意しておくと安心です。
冬場の結婚式は、会場によって寒いこともあります。チャペルは、木の椅子が多く、ウェディングプランナーさんから、「寒いですよ」と言われることもあります。また、庭園のある会場だと、冬場でも屋外での写真撮影があることも。シニアの方や、高齢の方は、温かい小物を用意しておくと安心です。
足元を隠すこともできるし、防寒にもなります。洋服にあった色が無難。ただ、車椅子のタイヤにからまないように気をつけてください。
冬場の結婚式の時用に。ゆるめの綿素材で、5分丈か7分丈の物を。レッグウォーマーは、ズボンの中でもごもごしてしまうので、ズボン下のほうが快適です。
小さめの「貼るタイプ」「貼らないタイプ」の両方を。「貼るタイプ」は、服の上から。ただ、低温やけどにならないように、周りの方が気をつけて。「貼らないタイプ」は、手に持っておくと高齢の方は、安心されるようです。
高齢者の外出で、一番多い事故は、転倒です。転んでしまうと、骨折してしまうことが非常におおい。せっかくのハレの日に骨折なんて、悲しすぎる。転倒すると、大腿骨骨折、圧迫骨折、腕の骨折など、生活に影響が出てしまいます。
特に雨の日は、滑りやすい床、マンホールの上、排水溝の溝などに気をつけて、周りの方がサポートしながら歩いていきましょう。
結婚式での靴はとっても重要です。
なんだかんだと後回しになりがちな靴。お式当日に靴のトラブルで慌てないためにも、必ず一度試し履きと、チェックをしてくださいね!!
履きなれた靴が一番おすすめなのは絶対ですし、ハレの日に、普段履きの靴でいいの?と思いがちで、失礼になるかというと、メリハリが肝心で、きちんとできる部分が乱れなく華やかに装っていれば、場違いな空気にはなりません。
汚れている、破れているとか・色があっていなくて目立ってしまう以外は、気にならないものです。
結婚式をきっかけに、履き心地の良い軽くてかっこいい靴が見つかれば、ちょっとしたお呼ばれやレストランでお食事の時にも、履いていきたいもの。外出が楽しいものになりますね。
介護の必要な大切なご家族と
結婚式の喜びを分かち合うお手伝いをいたします。