1年前にご病気になられた新郎様のお父様。現在、在宅で療養生活を送っていらっしゃるが、長時間の外出は、ご病気後、されたことが無いので、心配。
10:00 会場待ち合わせ 個室にて着替えやケア |
「新郎のお父を参列させたい」と奥様から連絡が入ったのは、結婚式の5か月前でした。ご病気になられたあと、長時間の外出をしたことがなく、心配している・・とのご相談でした。
まずは、結婚式が近づいてから、ご体調を考えてスケジュールを考えましょうと、アドバイスをさせていただきました。
そして、結婚式1か月前になり、お父様を訪問しました。
ご体調も落ち着いているので、披露宴も参列することになりました。
「息子さんの結婚式、お手伝いさせていただきますね。」とお声をかけると、お父様は感慨深い表情をされ、涙があふれそうなご様子でした。
当日の朝
快晴の冬空がどこまでも広がっています。1本路地を入ると、都心とは思えない静けさでした。
今回は、会場での待ち合わせでした。私たちは、少し早めに到着し、お父様専用の控室の準備を整えます。そうしていると、新郎のご両親も、早めに到着しました。
車椅子で、お父様がタクシーから降りてきました。顔色も良く、体調も良さそうで、ホッとします。
お祝いの言葉を伝えると、「よろしくお願いします。」と、やや緊張されているご様子でした。
早速、控室へご案内します。親族紹介まで、90分近くありますが、早速着替えはじめます。
奥様が、準備してくださったモーニング。袖口・裾にジッパーがついています。着る人にも・着せる人の事も考えた、デザインです。
ズボン、シャツ、ベスト、ジャケット、順番に着ていきます。車椅子の背もたれが、倒せるので、着替えがスムーズです。靴も履いていただきました。すべて、ぴったり、です。
モーニングがとても良くお似合いで、凛々しく素敵でした!!
親族紹介の時間まで、まだ少し時間がありました。
お父様が、何か伝えたがっています。
「○○さん、○○さんが来るはずだから、挨拶をしたいので・・」と。
父親として、しっかり礼を尽くしたいという思いがあふれ出ていました。
親族紹介では、ご親族の先頭にお父様をお連れします。やや緊張した面持ちのご様子です。和やかなムードで、ご両家のお母様が、親族紹介を進めていきます。
その後、挙式のため、チャペルへお連れしました。最前列にお父様のスペースが準備されていました!
新郎新婦様が入場してくるのを見た途端、号泣されたお父様!!嬉しさのあまり顔がくしゃくしゃです。指輪交換でも号泣。新郎新婦様が、声を合わせ誓いの宣言でも号泣。周りの方々も、そのご様子に、感激していらっしゃいました。
本当に、来れて良かった!!!
披露宴
お父様自身は、お食事を召し上がることはできませんが、ご家族に囲まれて、嬉しそうです。ご家族一人一人が、お父様との時間を丁寧に刻んでいます。
休憩を少し取っていただくため、席を外しました。少し休んでいただいた後、ご家族みんなの声が聞こえる、会場に戻りました。
お色直しした新婦様が、一段と華やかです。テーブルラウンドで、写真撮影がありました。お父様は、新郎様と言葉を交わしています。
ゆったりとした時間が流れていきます。
むすびの時間が近づいてきました。お父様は、移動しない予定でした。でも、車椅子を方向転換さえすれば、距離的にもそれほど難しくなく、前に並べることが確認できたので、急きょ、お父様も前に出ることになりました。
ご両親が揃って並べたことに、お父様はもちろんのこと、お母様も感無量の表情でした。
新郎様が、ご両親の方に歩いてきます。向かいあって、感謝のことばが述べられます。心のこもった温かいお礼の言葉。やっぱり、一番、ジーンときます。
おひらき
新婦様のご祖母様が、お父様に近づいてこられます。お父様の顔の位置まで、腰を低くされ「・・孫のこと、よろしくお願いしますね!」と、深々と頭を下げていかれました。お父様は、何度も何度もうなずいていました。
帰り支度をします。
無事に終わってホッとしたのか、着替えが終わると、すやすやお休みになっています。快晴の冬空の下、お父様を乗せたタクシーの出発です。
私たちは、安堵と晴れやかさが入り混じった気持ちで、いつまでも見送りました。
ご新郎様のお父様 ご病気で麻痺などがあって不安。会場でお待ちし、挙式と披露宴でのサポート。
13:40 介護タクシー到着 |
結婚式当日は、会場での待ち合わせでした。
曇り空でしたが、午後になって、晴れ間が時折みえ、とてもおめでたい良い感じでした。
私たちは、少し早めに会場に入りました。
親族控室で待たせてもらっていると、お父様がご到着になりました。 車のバックシートから降りていらっしゃいました。とても晴れやかなお顔でした。
ご挨拶へ伺った日とおなじ、ニコニコと素敵な笑顔です。
お父様とのご挨拶は握手でした。 「よろしくお願いします。」握手している左手から、歓びと感謝していただいている熱い思いが伝わってきます。
親族控室で、何本か持参されたネクタイを選びます。
しばらくすると、ご親戚の方が、一人二人・・・と到着されます。
親戚同志でも、はじめは誰か分からないご様子です。到着して、別席でおしゃべりしていた方々が、こちらに向き直って、お父様のお顔をじっと見てから「〇〇ちゃん?」 「○○ちゃん!。」と感極まって、手をしっかり握りあっています。
お父様は6月にご入院していらしたので、皆様本当にご心配していたようです。
お父様は、「休憩しなくて大丈夫だよ」と、挙式も披露宴も、最初から最後まで会場にいることが出来ました。 新郎新婦様のお気遣いがあふれた、温かい結婚式でした。
車椅子で出席されるご祖母様の体調が心配。ご自宅にお迎えし、挙式から披露宴までをサポート。趣のある式場ゆえの段差や階段が心配。
8:00 ご自宅訪問 |
この日の朝は、天気予報が見事に的中し、雪が降っていました。タクシーの運転手さんも早めに到着し、玄関の足場が滑らないように、雪をよけてくれていました。
寒い時期なので、ご祖母様の体調が安定しているか・風邪をひいていないか、この日までずっと気になっていました。
訪問すると、ご祖母様は、晴れやかなお顔で出迎えて下さり、ホッとしました。疲れやすい方と伺っていましたので、挙式に出席が一番のご希望で、ご体調次第では、披露宴は途中で抜けることもあると考えていました。
長男様も「披露宴中に、もしかしたら、ウトウト眠っちゃうかもしれませんが、お相手に失礼じゃないですかね?」と心配そうにおっしゃっていました。
「休憩室が準備してあるので、大丈夫ですよ。」と、安心して良い事をお伝えします。
車で結婚式場に近づくにつれ、都心ではまだ雪が降っていないことに気づきます。
外は寒いですが、車内はぬくぬくしています。ご祖母様の足の浮腫がないか・暑すぎないか調整して、道中を過ごしました。
久しぶりの長距離の外出で緊張もあるのか、ご祖母様はウトウトもせずに、結婚式場に到着しました。
娘さんと相談し、ぎりぎりの到着で、スケジュールを進めていました。予定通りです。
直ぐにチャペルへ案内されました。
その時分には、都内は雪が舞いはじめ、幻想的なホワイトウェディングです。
プレパーティが室内へ変更になったので、ご祖母様も和気あいあいとしたムードを存分に味わっていました。新郎新婦とも距離が近く、ご祖母様は本当に嬉しそうです。
披露宴がはじまり、そろそろ休憩したほうが良さそうか、ご祖母様に尋ねます。
「楽しいから、ここにいます!」
ウトウトどころか、披露宴パーティでも最後まで席をはずさず出席されたのです。泣いたり、笑ったり、食べて・飲んで・拍手したり・・・本当に楽しまれていました。
わたしたちの不安が予想以上に吹き飛んで、こんなにご祖母様の笑顔がみれるとは、思っていませんでした。結婚式って本当に不思議ですね!
この式場は、テレビドラマの場面や撮影のスポットとして、とても素敵です。ただ、エレベーターはなく、石畳や階段が多く、ご高齢の方は大丈夫かしらと不安な方もいらっしゃいます。
今回は、全く車椅子から降りて歩くことが出来ない方でした。でも、休憩用のソファを下におろしてセットしたり、車椅子を抱えたりして、サポートしました。とても都心とは思えない、外国のような情緒のある式場ですので、ご出席できて本当に良かったと感無量です。
ご祖父母さまお二人での遠方からの上京で、事故などがないか心配。また、慣れない場所でご不安にならないか。
4:35 ご自宅へ訪問 |
早朝にお迎えに行くと、おじい様は、最初は「今日は何しに行くのかな? 誰の結婚式かな?」と心配そうにおっしゃっていました。でもすぐに私たちのことを頼りにしていただき、ご安心されたご様子でした。
以前は、ご夫婦二人で海外を旅行されていたそうで、お荷物もコンパクトで、コートも軽いものを選んでいらして、旅慣れたご様子でした。今回は杖と、車椅子が必要でしたが、臆するところがない、本当にお気持ちがお元気で、かっこいい、おじい様とおばあ様でした。式場に到着し、お二人の笑顔が120%になったのを見たときには、私たちも幸福で満たされました。
親族控室では、20数年ぶりに、ご親戚がお集まりになったそうで、自分のことのように嬉しく、あらためて、結婚式ってすごいなあ、家族っていいなあ・・とじわっとした瞬間でした。
親族紹介の時には、朗らかなおじい様も少し緊張気味でした。式場の方が座っても大丈夫ですよとご案内くださいましたが、今まで何組もお仲人を務められたそうで、ここは立つべき時とご判断されたのか、ご紹介が終わるまで立っていらっしゃったのには心を打たれました。
おばあ様は、美しいお孫様の花嫁姿をみて、「あの子に、あの色味とデザインは、本当によく似合っている。」と大絶賛されました。
ご新婦のお兄様が「おじいちゃん、おばあちゃん!」と駆け寄っていらしたことも本当に嬉しかったそうで、「あの子は本当に優しい、いい子だから、、、」と楽しそうに、何度も話していました。
ひ孫様(3歳くらい)が、ご新郎へチュッパチャプスの花束を渡すサプライズがあり、「あれでも、よ~役目果たしたわ」と感心され、ご披露宴をしっかり楽しんでいらっしゃいました。
式場スタッフ様の心遣いも素晴らしいものでした。おじい様・おばあ様は、披露宴の途中で帰路につく事になっていましたが、中座のあと、披露宴会場の外で新郎新婦と祖父母様だけの写真撮影の時間を、割り出して下さったのです。
分単位で進んでいく結婚式の進行を変更するのはなかな大変だったと思いますが、「せっかく遠方から来てくださったのだから・・」と、お気遣いをいただきました。式場の方々が、お二人のことを真剣に思ってくださっていることが、ひしひしと伝わってきて本当に心を動かされました。
おばあ様は帰宅の新幹線の中で、とても良い結婚式だった、本当にきれいだった、お色直しのドレスが似合っていた、良い土産になった、と何度も何度も仰っていました。
少しお休みになられるかな?と思いましたが、そのまま起きていらっしゃいました。本当に来れて良かったと、何度も仰っていました。
帰路では、すっかりお二人ともくつろがれ、おじい様は、いろんなお話をしてくださいました。高校の先生だったそうで、先日、歩いていたら 後ろからきれいな着物のお姉さんが「先生ですね。お世話になりました。」と声をかけてきて、すっかり当時のことを忘れてしまっていたよと、聞かせてくださいました。教員になられたとき、雨の日も毎日自転車で通って大変だった事もお話しくださいました。
新幹線で奥様がお化粧室に立たれて行ってしまうと、「うちのおばはん、どこやろ?」と奥様のことを気にかけられ、とても仲の良いお二人でした。
おじい様はかなりご高齢ですが、少し年下のおばあ様と本当に仲睦まじく、こんな風に年を重ねられたらいいなあと、学ばせていただくことだらけでした。終始穏やかで、笑顔が絶えないお二人との貴重な時間は、なににも代えがたい思い出となりました。
パレスホテルのスタッフ様も、いつもにこやかに接してくださって、私たちのケアエスコートのお仕事もとても共感していただき、「大変なお仕事ですね」と声をかけてくださいました。
関西から早朝に出発し、日帰りという強行スケジュールでどうなることかと不安もありました。でも、お二人の穏やかなお人柄と、体力がおありでしたので、無事に全工程を終え、長距離の往復を完了することができました。
ご病気があり車椅子、お手洗いなどのサポート必要、長時間の外出なので疲れないか心配
14:00 お式場で待ち合わせ |
ホテルのロビーでお待ちしていると、お祖母様とご家族を乗せた介護タクシーが見えました。
急いで正面玄関の車寄せへ向かい、皆様をお迎えしました。
良いお天気でしたが、とても寒い日でしたので、車椅子のお祖母様におひざ掛けをおかけし、急いでホテルの中へ。2Fのお祖母様専用のお控室にご案内し、お薬を飲んで頂いてからお着替えのお手伝い。
お化粧はすでにされているようだったので、お聞きすると、「自分でしてきたのよ」とにっこり。
お孫様のご結婚式だからかな、と思うと私達も自然と笑顔になります。
写真スタジオでこの日初めて新郎新婦様とご対面。
お背中を一生懸命伸ばしながら、お祖母様は新婦様の姿を目で追ってらっしゃいました。
あまりご自分からは話されないし、お声も小さいお祖母様だけど、
「お孫様、とっても素敵ですね!!」と私達がお声をかけると、
「本当!誰だか分からないくらいだわ!」と明るく大きな声が返ってきました。
チャペルでは車椅子のまま一番前のお席にご案内。
お祖母様はチャペル内を見まわしたり、飾られているお花を見て
「綺麗なお花ね~」と嬉しそうだったり、その自然なご様子が、周りの空気を和ませていました。
挙式後はテラスにてフラワーシャワー&お写真。
お写真は、お祖母様とお祖父様が新郎新婦様を挟んでの撮影。
お祖母様を新婦様のお隣にご案内すると、新婦様が腰をかがめて
「おばあちゃん、ありがとう!」ととっても嬉しそう!
お祖母様も新婦様のドレスに触れながら、何か新婦様にお声をかけていました。
その後レンズに向いたお祖母様のお顔は、この日一番の笑顔だったように思います。
ご披露宴の始まる前にお手洗いへご案内。
ずっと車椅子に座ったままでもあったので、腰の負担が軽くなるよう、
少し立ち上って頂く目的もありました。
お祖母様はお背中も曲がっていて、すぐ右側に傾いてしまうので、右の脇にはクッションを挟みこみ、
こまめに体勢を整えて差し上げます。
少しご気分を整えてからご披露宴会場へ。
会場では、1名のスタッフがお祖母様のお隣に座り、もう1名は少し離れた後ろで待機。
お食事はフォークを使い、ご自分で召しあがるので、ナイフで切ったり、
取りにくいお料理をフォークの上に乗せたり、スープはお口元まで運ぶお手伝いをしました。
途中疲れたらいつでも休めるようにと、ご家族様がお部屋をとって下さっていました。
でも、ご休憩のお声かけをしましたが、「不思議と全然疲れてないの。嬉しい日だからかしら」
と最高の笑顔のお祖母様。
同じテーブルのご家族も少し驚かれつつも、お祖母様と一緒に笑っていました。
ご披露宴もお開きになり、送賓に立たれる新郎新婦様のもとへ。
「おばあちゃん、ありがとう」と手渡されたプチギフトのチョコレート。
お着替えのためご案内したお控室に行くまで、しっかりとご自分の手でお持ちになりました。
新婦様がお生まれになってから、お祖母様は口癖のように、
「○○ちゃんの花嫁姿見られるかな。」
「結婚式に出られるかな。」
と仰っていたことを、帰り際ご家族から聞きました。
あまりご自分からはお話されないお祖母様ですが、
とても嬉しそうに新婦様を見つめていたお姿を想い出すと、
どんなにこの日を楽しみにされてきたのかが、痛いほど伝わってきました。
お祖母様の願いが叶って本当によかった!!!
そして、そのお手伝いをさせて頂けたんだと思うと、
言葉にはできない、こみ上げてくる幸せな想いがあります。