車椅子をご使用で、すべてに介助が必要。普段はベッドに横になっていることがほとんどなので、
外出すること自体がとても不安。
8:00 ご入居先へ訪問、準備 |
ご入居先の食堂からスタッフ様に車椅子を押され出てこられたお父様は、とても硬い表情でした。
「もう緊張してるの?まだ早いよ~」とご家族が笑ってお気持ちをほぐされるようにされると、
「そう?」と思わずつられて、笑みがこぼれるお父様でした。
お昼にお飲みになるお薬をお預かりし、昨日と今朝の様子を伺いながらお父様のお部屋へ。
ジャケットを着ていただき、お髭や髪の毛を整え、お荷物の準備・確認。
長時間の外出のため、お身体の負担がないように、
介護タクシーと一緒にリクライニングタイプの車椅子をご用意していましたが、
「いつも使ってる車椅子がいい」とご希望されたので、普段お使いの車椅子でご出発。
ホテルのエントランスで介護タクシーを降り、ご親族お控室へ。
まだどなたもいらしていなかったので、お洋服を整え、
自然に傾いてしまう左側へバスタオルを挟んだり、
深く座り直して頂いたり、、など、体勢も整えて準備していきました。
お祝いの桜湯をまだ熱いまま口元に運ぼうとされるので、湯呑が少し冷めるのをお待ち頂き、
スタッフも湯呑に手を添えて召し上がって頂きました。
あっという間に召し上がってしまったので、式場のスタッフ様にもう1杯ご用意頂き、
ご家族様がいらしてからご一緒に召しあがって頂きました。
ご親族紹介のため、新郎新婦様がお控室へ。
紋付羽織袴を着た新郎様を見た途端、目を赤くして涙ぐむお父様。
動く右手で車椅子をこぎ、新郎様のお近くに行こうとされるので、私たちが車椅子を押し新郎様のもとへ。
「お父さん、無事着いてよかった!」と、とても嬉しそうな新郎様。
お父様は頷くだけで精一杯の様に見えました。
挙式は3階のためエレベーターでの移動。
会場に入り、staff様の指示のもと神殿向かって右側の列の一番後ろのお席へ。
もともとあった椅子を外し、車椅子のままお席へご案内。
私達スタッフはお父様の後ろで椅子に座って待機し、始まりを待ちました。
新郎新婦様がご入場されると、再びお父様の目に涙が。
私は椅子から離れ、お父様のお側へ行き、ハンカチをお渡しそっと席へ戻ります。
お式中、時々ご自分で車椅子を動かされるので、
「まだお式中なのでもう少しお待ちくださいね」と小声で声掛けし、
車椅子が動かないようにこっそり、そしてしっかり手で押さえていました。
挙式後ご披露宴までは別室にてご休憩。
ソファーを2つ並べてベッド代わりにし、少し横になって頂きました。
ご披露宴では、お食事は、ほぼご自分で召し上がれるものの、
ムセてしまう事があるので、
小さく切ったり、ゆっくり食べて頂く様にお声掛けしたり、飲み物をおすすめしたり、
お父様のお隣に付いてお手伝いしました。
お酒も大好きなお父様なので、飲みすぎないようさりげなく、
遠くにグラスを移動したりなどの対応もさせて頂きました。
お声掛けするもご休憩を取られることなく、お開きまで楽しそうにお過ごしでした。
お開き後、お控室に戻り、
ホテルの方が用意して下さった簡易ベッドに横になって頂き、衣類などの交換。
お父様だけの控室や簡易ベッド、ポットでお湯を用意して下さったプランナー様や
ホテルの方々にはとても感謝しています。
そのままお迎えの車が到着するまで、ベッドでお休み頂いてからご入居先へ戻りました。
一日を通して口数の少ないお父様でしたが、お帰りの車の中、
同乗して下さったご家族と今日の結婚式の事を楽しそうに話されていました。
時折笑い声が聞こえて、振り返らなくても笑顔なのが分かるくらいです。
前の席で私達スタッフ二人、お話を邪魔しないように静かに聞きながら、
「ご出席できて本当に良かった」と心からそう思いました。