久しぶりの長時間の外出なので体調や体力が心配
10:00 介護施設へ、訪問 着替え・お化粧 |
お打合せの初めから、ご家族や、ケアマネージャーさんから、体力的に心配との声があり、披露宴だけ参加され、途中で失礼していただくことも念頭においていました。
前日、ご連絡させていただくと、体調が良いとのことで安心し、当日を迎えました。
訪問させていただいたときには、少し緊張気味のご様子でしたが、お化粧のお手伝いをしながら、お話を伺っているうちに、お顔の緊張も解けていきました。お孫さんの中で、初のご結婚式との事で、この日を心待ちにされていたようでした。
アイシャドーやチーク・口紅の色も一緒に選んでいただき、ドレスを着て、お髪のセットが終わると、鏡に向かっていただきました。にこやかな笑顔が自然にあふれて、華やかになった姿は、本当にお奇麗で私たちも嬉しくなりました。
さて時刻は11時。リクライニング車椅子に乗り換えて出発です。
介護施設からベイホテルまで車で50分。車酔いされないようにと祈りながら、乗車のお手伝いをしました。
ゆっくり、落ち着いたご様子でしたが、楽しくお話が弾みました。以前のお住まいは海が近かったので、ご友人たちが集まり、海へよく出かけた思い出など聞いているうちに、車酔いも無く到着しました。
途中、自然渋滞の情報があり、12時をまわる予測だったので迂回の道を通ることにし、予定より15分早い11時45分には、ご親族控室のあるB2ロビーに到着しました。
おばあさまは、ご披露宴からのご参加のため、ほかの皆様はまだ挙式会場にいらっしゃいました。少し待つつもりで、ロビーを歩いていると、婚礼担当者2名が近づいてきました。何と、親族の写真撮影に間に合うかも・・と粋なご提案をしてくださったのです。急遽、写真室へ案内されると、車椅子のスペースが設けて下さっていて、ご親族はすでにひな壇に並び終えるところでした。撮影に見事間に合ったのです。全員そろってのお写真になりました。フランス人形のようにかわいらしい花嫁姿をご覧になった、この瞬間から、おばあさまはずっと涙ぐんでおられ、目元はハンカチで覆われていました。
披露宴開宴までは、お控室で過ごされ、ご親戚の方がおばあさまに近づいてこられては「来れてよかった」「元気でよかった」「きれいねえ」と声をかけて下さり、本当に無事にこの日を迎えられ、この場に到着することに関わらせていただけたことが感慨深く、なんとも言い難い気持ちでいっぱいでした。
そして、この間に、このお部屋に新郎新婦が立ち寄られたのですが、
新婦様がご祖母様を見かけるなり「おばあちゃ~ん!来れてよかった!」と、おばあさまの手にハイタッチして行かれ、素顔の花嫁さんという感じになって、またまた感激させられるのでした。
ご披露宴中、おばあさまの円卓だけは移動しなくて済むように、新郎新婦様が来てくださっての写真撮影。本当に心遣いが行き届いていました。その際、またまた、ご新婦様が、「おばあちゃん、まだまだ中盤だけど、つかれてなーい?」と優しく声をかけてくださるのでした。ご新婦様ご自身も緊張されているだろうに、そんな中での心づかいに、感激でした。
中座後の再入場では、打掛でのご登場に、おばあさまは感極まっていらっしゃって、本当にお連れできた事が、私たちの心も幸せいっぱいにしてくださいました。
おばあさまによると、ご新婦は本当に着物がお好きで、着物を着て登山をしてしまった思い出があるそうで、あふれる涙をふきながらお話しくださいました。
お食事も楽しまれ、ご親戚になる方々とのご挨拶もしっかりされ、ご親族にも「元気で頑張りなさいね」と声援も送っておられ、おばあさまの寛容さとチャーミングなお人柄に魅了された1日でもありました。
お祖父様:車椅子、手のお力が弱く、お手洗い、お食事などお手伝いが必要
お祖母様:寝たきりで車椅子、ご気分が変りやすい
お祖父様 お祖母様 10:00 ホテルでお待ち合わせ、 |
お祖父様、お祖母様の、お2人でのご出席でしたので、 スタッフは3名でお手伝いさせて頂きました。ホテルのお部屋でお祖母様のお仕度を終え、控え室に向かうと、 ちょうどご入居先からお祖父様もご到着されました。
お祖父様、お祖母様の車椅子を並べてお停めすると 息子様が近くにいらっいました。 お祖父様の頬に手をあて「お父さん、かっこいいよ!」と嬉しそう。 それまで緊張気味だったお2人の表情にも笑顔が見られました。
新郎新婦様がお控室へ入って来られると、 お祖父母様は顔を上げて新婦様をじっと見つめてらっしゃいます。 口数の少ないお2人だけれど、 「お孫様とってもお綺麗ですね!」とお声掛けすると、 うん、と頷かれ、幸せそうに新婦様を見守ってらっしゃいました。
挙式会場の神殿へは、お祖父母様とも車椅子のままご案内。 私たちスタッフは、お2人の後ろに並んで座り待機。
挙式中は、特にお祖母様のご様子をこまめに確認し、 ご気分が変わりそうな様子の時は、 「お孫様はあちらですよ」「あともう少しで終わりますよ」など 小声でお声掛けしていました。
ご披露宴までの時間は、 2名のスタッフでお祖父様のお手洗いのお手伝い、 1名はロビーでお祖母様とお話しながら過ごしました。
ご披露宴では、お祖父様・お祖母様の隣りにそれぞれスタッフが1名ずつ座り、お手伝いしました。
ご披露宴開宴の頃には、お祖母様はだいぶお疲れのご様子でしたが、 それでも新郎新婦様が入場されると、 手元で小さく拍手をされていました。
お祖父様はスタッフと話しながら、 とても楽しそうに手を叩いてらっしゃいました。
お祖父様には、お料理を小さくお切りしたり、 つかみにくいお料理をスプーンやフォークにお乗せしました。お祖母様はとても小食なので、 食べられそうなお料理をごく小さくお切りして、お口まで運ぶことなどお手伝いさせて頂きました。
途中、お祖母様にかなりお疲れのご様子が見られたので、 「ご休憩されませんか」とお声掛けし、 スタッフ2名が付き添いホテルのお部屋へ。 (残りのスタッフ1名は会場に残り、お祖父様のお手伝い)
フォーマル着から私服に着替え、ご披露宴おひらきまでお休み頂くと、 少し楽になられたのか、表情が和らぎました。
「今日は、行けるとは思ってなかったから、少しでも出席できて嬉しいわ・・・」
不意に出たお祖母様の一言で、何だか胸が熱くなりました。
お祖父様は、ご披露宴のお開きまでご出席する事ができました。エンドロールのビデオでは、 新婦様の小さい頃のお写真が出ると、 「○○ちゃんだ!!」ととても嬉しそうにご覧になっていました。
お祖父様、お祖母様の介護タクシーがそれぞれホテル正面玄関に到着。 息子様とお祖母様を乗せた介護タクシーが発車すると、 車の中から手を振って下さってるお祖母様の姿が見えました。
「もっと疲れないような工夫ができたのでは・・」
「本当は会場で最後までご覧になりたかったのでは・・」
私達の中で、もっと、もっと、という気持ちがありました。でも、 手を振るお祖母様の姿がそのモヤモヤを消してくれたような気がしました。
お祖父様とスタッフ1名の乗った介護タクシーも手を振って見送りました。 そのお姿を見ながら、お祖父様もお祖母様も、揃って無事にご出席できたこと、喜んでいただけたことで、安堵と嬉しさが、 こみ上げてきました。
そこにいて欲しい人がいる結婚式。 色々な事情で叶わないこともあると思うけれど、 諦めて欲しくないな、と切に思った一日でもありました。